※この記事は2025年5月20日に公開し、2026年10月、現在の知見に合わせて内容を見直しました。
「犬の腸活に、オートミールがいいと聞いたことがある」
そんな方もいるのではないでしょうか。
オートミールは、食物繊維を含む穀物のひとつです。なかでも、水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンを含むことから、ヒトの食事でも腸内環境や食後の代謝との関係について広く研究されています。
では、犬の場合はどうなのでしょうか。
結論からいうと、オートミールは食物繊維を含む食材として犬の食事に取り入れることができますが、「オートミールを食べれば腸が整う」と単純に言えるものではありません。
犬を対象に、食物繊維やオーツ麦と腸内細菌の関係を調べた研究もありますが、食物繊維の種類や量、食事全体の構成によって反応は異なります。
今回は、「腸活」という視点から、オートミールの特徴や食物繊維との関係を見ていきましょう。

そもそも「犬の腸活」って?
「腸活」という言葉に、医学的にひとつの決まった方法があるわけではありません。
この記事では、毎日の食事や暮らしを通して、愛犬のおなかの健やかさを考えることという意味で「腸活」という言葉を使います。
犬の腸内には、さまざまな細菌が存在しています。
こうした細菌の集まりは「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼ばれ、一般には「腸内フローラ」という言葉でも知られています。
腸内細菌叢は、食事の内容によっても変化します。
だからといって、「特定の菌が多ければ健康」「この食材を食べれば理想的な腸内環境になる」と単純に判断できるわけではありません。
犬によって腸内細菌の構成には違いがありますし、年齢や健康状態、普段の食事など、さまざまな要因が関係します。
腸活を考えるときも、ひとつの食材や成分だけを見るのではなく、毎日の食事全体の中で考えることが大切です。

腸活で「食物繊維」が注目される理由
犬の腸内環境と食事の関係を考えるとき、食物繊維は大切な要素のひとつです。
ただし、「食物繊維」とひとことでいっても、その性質はさまざまです。
一般的には、
- 水に溶けやすい「水溶性食物繊維」
- 水に溶けにくい「不溶性食物繊維」
に分けて説明されることが多くあります。
さらに、腸内細菌によって発酵されやすいか、水分をどの程度抱え込むかなど、食物繊維の種類によって消化管の中での働きも異なります。
犬を対象とした研究でも、異なる食物繊維を含む食事によって、腸内細菌やそこでつくられる代謝物に異なる変化がみられることが報告されています。
つまり、「食物繊維ならどれでも同じ」「たくさん摂れば摂るほどよい」というわけではありません。
「犬に食物繊維は必要ない」は本当?
「犬は食物繊維を消化できないから、与えない方がいいのでは?」
「食物繊維は胃腸に負担になるのでは?」
そんな話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
たしかに、食物繊維の多くは、犬自身の消化酵素によって小腸で消化・吸収されるものではありません。
しかし、「消化・吸収されない=必要のないもの」ではありません。
食物繊維には、便のかさや水分、消化管を通過する時間に関わるものや、大腸の腸内細菌によって発酵されるものがあります。
発酵によってつくられる短鎖脂肪酸の一部は、大腸の細胞のエネルギー源としても利用されます。
犬の栄養学では、食物繊維は、たんぱく質やビタミンのように「一定量を必ず摂らなければならない」と必要量が定められた栄養素ではありません。
一方で、消化管の健康や便の状態、腸内細菌との関係を考えるうえで重要な食事成分として扱われています。
人の栄養学でも、食物繊維は消化・吸収されにくい成分として扱われてきましたが、その後研究が進み、便通や腸内環境など、消化されなくてもさまざまな役割を持つことが分かってきました。現在では、食事の中で意識して摂りたい成分のひとつとして位置づけられています。
ただし、ここで大切なのは、「食物繊維は多ければ多いほどよい」という意味ではないことです。
食物繊維にはさまざまな種類があり、その性質も異なります。量が多すぎれば栄養素の消化吸収に影響することがありますし、発酵されやすい食物繊維を急に多く摂ることで、ガスや軟便、下痢につながる場合もあります。
また、胃腸が弱っているときや消化器の病気がある場合には、その状態に合わせて食物繊維の種類や量を調整する必要があります。
だからこそ、
「犬は食物繊維を消化できないから不要」でも、
「腸にいいからたくさん与えればいい」でもない。
愛犬の状態や食事全体を見ながら、適切な種類と量を取り入れることが大切です。

食物繊維と、犬の「便」の関係
愛犬の腸活を考えるきっかけとして、便の状態が気になっている方も多いかもしれません。
「最近、少しかたい」
「やわらかい便が続きやすい」
「毎日の便の状態を、食事からも考えてみたい」
そんなときに注目される食事成分のひとつが、食物繊維です。
食物繊維は、その種類によって、水分を抱え込んだり、便のかさに関わったり、腸内細菌によって発酵されたりと、消化管の中でさまざまな働きをします。
そのため、便の量やかたさ、腸の中を通過する時間などを考えるうえでも、食物繊維は大切な要素のひとつです。
ただし、「便がかたいから食物繊維を増やせばよい」「便がゆるいから食物繊維を摂ればよい」と一律に考えることはできません。
食物繊維は種類や量によって性質が異なり、愛犬の体調や普段の食事によっても合う量は変わります。急にたくさん加えることで、かえって便がゆるくなったり、おなかの調子を崩したりすることもあります。
だからこそ、腸活では「食物繊維をたくさん摂ること」ではなく、毎日の食事の中で、その子に合った形で取り入れることが大切です。
なお、便秘や下痢が続く、血便がある、嘔吐や食欲低下を伴うなどの場合は、食材や腸活だけで解決しようとせず、動物病院に相談してください。

オートミールには、どんな食物繊維が含まれている?
オートミールは、えん麦(オーツ麦)を食べやすく加工した食品です。
オートミールには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。
なかでも、オーツ麦の特徴としてよく知られているのが、β-グルカンです。
β-グルカンは水溶性食物繊維の一種で、オーツ麦や大麦などに含まれています。
このβ-グルカンを含むことが、オートミールが「腸活食材」として紹介されることが多い理由のひとつです。
ただし、ここで注意したいのは、
「β-グルカンを含む」ことと、「オートミールを食べれば犬の腸内環境が改善する」ことは同じではない
ということです。
食材に含まれる成分と、実際にその食材を食べたときに犬のからだで起こる変化は、分けて考える必要があります。
β-グルカンは犬でも研究されている?
犬を対象に、オーツ麦由来のβ-グルカンを使った研究も行われています。
2018年に発表された研究では、オーツ麦由来β-グルカンを一定量配合した食事を犬に与え、代謝や消化性などへの影響が調べられました。
その結果、血中の総コレステロールなど一部の項目に変化がみられた一方、食後の血糖値には有意な差がみられませんでした。また、栄養素の消化率などにも変化が確認されています。
ここで重要なのは、この研究で使われたのは、β-グルカンを一定量配合した食事だということです。
家庭でオートミールを少量与えた場合や、オートミールを使ったクッキーを食べた場合に、同じ変化が起こることを示した研究ではありません。
そのため、
「オートミールを食べればコレステロールが下がる」
「血糖値の上昇を抑えられる」
「腸内環境が改善する」
と、一般的なオートミールの効果として犬に当てはめることはできません。
オーツ麦そのものと犬の腸内細菌を調べた研究も
β-グルカンだけでなく、オーツ麦そのものを含む食事について調べた研究もあります。
2023年には、犬に全粒のライ麦・オーツ麦・小麦をそれぞれ含む食事を与え、便中の腸内細菌や短鎖脂肪酸を比較した研究が発表されました。
穀物の種類によって一部の腸内細菌や短鎖脂肪酸に違いはみられましたが、この研究ではライ麦の影響が比較的大きく、オーツ麦だけに明確な「腸によい変化」が確認されたわけではありません。
また、研究者らも、観察された違いが犬の腸の健康にどのような意味を持つのかについては、さらに検討が必要としています。
これは、オートミールについて考えるうえで、とても大切な点です。
「オートミール=腸活に効く」と単純化するより、
食物繊維を含む食材のひとつとして、食事全体の中で取り入れていく。
それくらいの捉え方が、現在分かっていることに合っています。

「食物繊維=プレバイオティクス」ではない
腸活について調べていると、「プレバイオティクス」という言葉もよく目にします。
プレバイオティクスは、国際的な専門家組織ISAPPによって、宿主の微生物に選択的に利用され、健康上の利益をもたらすものと定義されています。
食物繊維の中には、プレバイオティクスとして働くものもあります。
一方で、食物繊維であればすべてプレバイオティクス、というわけではありません。
ですから、
「食物繊維が入っているから善玉菌が増える」
「オートミールだからプレバイオティクスになる」
と一括りにはできません。
「腸によさそう」というイメージだけでなく、その食材や成分について、実際にどこまで分かっているのかを見ることも大切です。
では、犬の腸活にオートミールは「あり」?
私たちは、選択肢のひとつとして「あり」だと考えています。
ただし、それは「オートミールを食べれば腸が整うから」ではありません。
オートミールは、食物繊維を含み、水溶性・不溶性の両方の食物繊維を含んでいます。また、オーツ麦由来のβ-グルカンを含むという特徴があります。
毎日の食事全体を考えながら、こうした食物繊維を含む食材を上手に取り入れていく。その中のひとつとして、オートミールを考えるのがよいのではないでしょうか。
一方で、たくさん与えればよいわけではありません。
食物繊維を急に多く摂ることで、犬によっては便がゆるくなるなど、おなかの状態に変化が出ることもあります。
愛犬にオートミールそのものを与える場合の量や調理方法、小麦との違い、アレルギーなどについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
犬にオートミールをあげても大丈夫?栄養・食物繊維の特徴と与え方・注意点
one’s dailyが、オートミールをクッキーのベース素材に選んだ理由
one’s dailyでは以前から、米粉を使ったクッキーをたくさん作ってきました。
米粉にも、クセが少なく素材の味を生かしやすいなど、クッキーの素材としてよいところがあります。
そのうえで、デイリズムの商品を考えるときに、
「毎日のおやつのベースになる素材は、何がいいだろう?」
とあらためて考えました。
そこで選んだのが、オートミールです。
オートミールは、食物繊維やたんぱく質を含む穀物です。
デイリズムでは、いつものおやつを単なるごほうびではなく、愛犬の毎日の食を少しずつ積み重ねていく時間として考えています。
だからこそ、特別なものを後から加えるだけではなく、クッキーの土台となる素材そのものから、食物繊維やたんぱく質を自然に取り入れられるものを選びたいと考えました。
もちろん、
「米粉よりオートミールの方がよい」
「どんな犬にもオートミールがよい」
という意味ではありません。
食材にはそれぞれ特徴があり、愛犬によって合う・合わないもあります。
それでも、
おいしく食べるいつものおやつから、食物繊維やたんぱく質も自然にとれる。
それが、one’s dailyがデイリズムのクッキーのベース素材にオートミールを選んだ理由のひとつです。
現在の「あさリズム」「ひるリズム」のクッキー6種類すべてに、オーツ麦粉末を使用しています。

まとめ|オートミールは、腸活を考える食材のひとつ
オートミールは、食物繊維を含み、水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンを含む食材です。
犬についても、食物繊維やオーツ麦、β-グルカンと腸内細菌や代謝との関係を調べる研究が行われています。
一方で、現在の研究から、
「オートミールを食べれば犬の腸内環境が整う」
とまでは言えません。
食物繊維は、犬自身が消化・吸収しにくい成分であっても、便の状態や腸内細菌との関係を考えるうえで大切な食事成分のひとつです。
ただし、ひとつの食材だけに大きな効果を期待するのではなく、普段の食事全体を見ながら、その子に合ったものを無理なく取り入れていくこと。
その中で、食物繊維を含む選択肢のひとつとしてオートミールを楽しむ。
one’s dailyでは、そんな考え方を大切にしています。
参考資料
- Bhosle A, et al. “Response of the gut microbiome and metabolome to dietary fiber in healthy dogs.” mSystems. 2025.
- Palmqvist H, et al. “Effects of whole-grain cereals on fecal microbiota and short-chain fatty acids in dogs: a comparison of rye, oats and wheat.” Scientific Reports. 2023.
- Ferreira LG, et al. “Oat beta-glucan as a dietary supplement for dogs.” PLoS ONE. 2018.
- Gibson GR, et al. “The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of prebiotics.” Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2017.
- Merck Veterinary Manual “Nutritional Requirements of Small Animals.”
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
